最も携帯性の高い楽器は?
携帯性の最も高い楽器は何でしょうか?
例えば、グランドピアノやパイプオルガン、コントラバスやティンパニーと比べてハーモニカやウクレレは携帯性が高いですね。
私たちが小学校で習った小さな縦笛も持ち運びに便利です。
ただハーモニカや笛よりもさらに数段、携帯性の高い楽器があります。
それは私たちの「声」です。
「声」はどこに行く時も一緒です。どこかに置き忘れることもありません。
声には高価な楽器にも劣らない表現力があります。
そして姿以上に個性を表現します。
ルックスはビューティーサロンに行けばかなり変わるかもしれません。
しかし声は正直です。
世界に一つしかない存在なのです。
上のド(C5)の音程の場合、私たちの声帯は毎秒523回、つまり毎分31,380回振動します。驚異的な弾性(元に戻る力/Elastizität)と高性能潤滑システム(Schmierung/lubrication)のおかげで、高周波でも低周波でも、フォルテでもピアニッシモでもしなやかに波打つ「奇跡の楽器」(Wunderinstrument)なのです。
自分の声は自分の「私有物」と思っている人がいるかもしれません。
しかし本当は自分の声は、自分のものではなく、「公共財」なのです。
ドイツ語:öffentliches Gut
英語:public good
フランス語:bien public
イタリア語:bene pubblico
スペイン語:bien público
日本語:公共財
中国語:公共物品
そこに良い聴き手がいてくれると声が喜びます。声が元気になります。
家庭でのホームコンサートや仲間とのミニコンサート、うちとけた会話がその原動力になります。
「良き聴き手」が空間を変えるのです。
一人で百回練習するよりも、人前で一回弾く(歌う/語る)ほうが身に付きます。
言葉や音楽で人を元気づけたり励ましたりする時、音が生き生きと輝いてきます。
「あなた方の光を、人の前で輝かせなさい。」(マタイによる福音書 第5章16節)
アシジのフランシスの有名な祈りには、Domine, fac me instrumentum pacis tuae. (主よ、私を平和の道具として用いてください。)と言う言葉があります。この「道具」という言葉は、ドイツ語、英語、フランス語では「Instrument」になります。「Instrument」は同時に「楽器」でもありますね!
私達も日々、自分の「内なる楽器」の手入れをしましょう。
いつかどこかで誰かの役に立つ時に備えて。
吉村謙輔
