「よろしくお願いします!」はどう訳す?

 国連での会議の休憩時間、同僚の日本語同時通訳者たちと「よろしくお願いします!」をどう訳すかについて雑談をしたことがあります。 あっという間に10通り以上の可能性があることが分かりました。「Nice to meet you!」 (Freut mich, Sie kennenzulernen!)「Let’s keep in touch!」 (Bleiben wir in Kontakt!)「 We look forward to working with you!」 (Ich freue mich auf eine gute Zusammenarbeit mit Ihnen !) 「I am counting on you!」(Ich zähle auf dich) から単に「Thank you!」 (Danke!) まで! 

 日本語には他にも、「おもてなし」「お世話になりました」「お疲れ様」「すみません」「いただきます」「困った時はおたがいさま」など普段、私たちは何気なく使っているのですが、ひとたび外国語に訳そうとすると、とんでもなく奥深い意味が現れてくる言葉がたくさんあります。

  通訳者や翻訳者はいつも「翻訳不可能性」の壁にぶつかりながら言葉の奥にある宇宙を探検します。毎日が新発見です。

 ゲーテは「外国語を知らない人は母国語が見えていない。」と語りました。逆に言えば、外国語を学ぶことで、母語の不思議さ、面白さが見えてきます。 ゲーテはドイツ人ですが、彼の英語はシェイクスピアの作品を翻訳できるほどでした。逆に英国人女性 J.K. ローリングは若い時にフランス語とドイツ語を一生懸命学びました。それがハリーポッターの独自の世界に生きているのかも知れませんね。

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